とんねるずも指導した高校サッカーの名伯楽。選手が勝手に育つ練習とは (2ページ目)

  • 松尾祐希●取材・文 text by Matsuo Yuki
  • photo by Matsuo Yuki

「タレントになってどうすんだと思いましたし、いつまでやるんだとも思いましたよ(笑)」と、古沼氏は少なからず不安を覚えたというが、ふたりは道を極めて今もなおトップに立ちつづけている。サッカーにとらわれず、自分の足で道を切り開いたわけだ。

 こうしてたくさんの選手を育ててきた古沼氏だが、自身が何かをしたとは思っていないそうだ。「あくまで自分は人としての在り方を教えただけで、選手の才能を引き出す役割でしかない」と考えている。

「プロサッカーで活躍したような子も含め、私が教えた部分は少ないと思います。ただ、私が口うるさく礼節や当たり前のことを言いつづけ、そういうものを理解して自分なりにモノにしていく。言葉が適切じゃないかもしれないけど、(選手は)勝手に育っていくものです」

 だからこそ、指導者は選手が勝手に育つ環境をつくらなければならない。厳しい練習を課すのもそのためだ。古沼氏は、選手が自ら努力する重要性を知る場を意図的につくったという。

「帝京の監督をしていた頃は、(選手たちは)ほかのチームより走っていたかもしれません。夏の合宿をする時は、わざわざ宿とグラウンドの距離を離しました。往復で5kmくらいあるので、朝、午前、午後と練習があれば、15kmは必然的に走らないといけない。歩こうと思っても、それでは間に合わないようなスケジュールを組むんです。練習でも走り回るから、必然的に大変な量を走ることになる。選手は知らず知らずのうちにやっているけど、選手は、これはなんとかならないかなと思って頑張ります」

 そうした取り組みをつづけていくと、選手たちに自然と継続性が備わっていった。何気ない日常のなかでも努力する姿勢が見られるようになり、驚くような成長を遂げる選手も少なくなかった。

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