大島僚太、進化の1年。3度の優勝で芽生えた日本代表返り咲きへの思い (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 しかし、2020年は4−3−3の新システムを採用し、より高い位置からボールを奪い、素早く相手ゴールに迫るサッカーを目指した。切り替えの速さやインテンシティの高さが求められるスタイルの導入は、まさに大きなチャレンジだっただろう。

 大島自身も当初は、新スタイルの習得に難しさを感じていたという。

「極論すれば、攻撃は点を取る、守備は点を取らせない。そのスタイルを11人がどうやってすり合わせていくか。ある意味でイチから作っていった状況だったので、やりがいがありながらも、同時に難しさも感じていました。

 ただ、今までやって来たことを肯定しすぎたら、チームの進化が止まってしまうとも思っていました。だから今までのことを肯定するより、否定するくらいの気持ちで、固定概念を壊しながら1年間を過ごしていたと思います」

 2017年、2018年とリーグ連覇を実現し、2019年はルヴァンカップで優勝と、3年連続でタイトルを獲得した川崎は、今まさに黄金時代にあるだろう。それでも、既存のスタイルを捨ててまで新たなサッカーにチャレンジしたのはなぜか。そこには、横浜F・マリノスに完敗を喫した2019年の悔しさがあったからに違いない。

「たしか、あの試合で僕たちのリーグ優勝の可能性が絶たれたんです。相手のスピードやインテンシティの高さがすごくて、ここ数年で一番強いと感じましたし、90分が本当に長く感じられた試合でした。それをホームでやられたのは本当に悔しかったですね。だから、マリノス戦への想いは監督からも感じられていましたし、僕たちもその悔しさを晴らしたいと強く思っていました」

 当初は半信半疑だった新スタイルへの順応は、キャンプを終える頃にはすでに手応えとしてあったという。そして大島自身も、新たなポジションであるインサイドハーフで新境地を開拓していく。

 これまでプレーしてきたボランチからひとつポジションを上げたことで、「前に出ていく作業というのは常に意識していました」と振り返る。もっとも、高い位置を取ることで、必然としてボールに触る機会は少なくなる。ボールタッチの回数を増やしながらリズムを作っていく大島にとっては、やりづらさもあったはずだ。

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