ルヴァンカップ決勝は隠れた名勝負の宝庫。ベストゲームと言えば... (4ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 劇的な同点ゴールで勢いづく札幌は、ドリブルで抜け出したチャナティップがファールで倒され、ゴール前でフリーキックを得る。すると、これを福森晃斗が得意の左足で直接決めて、今度は札幌が逆転。しかも、このときのファールで川崎の谷口彰悟が退場となったため、川崎は残り時間を10人で戦わなければならなくなかった。

 ついに勝利の女神は札幌に微笑んだ、かに思われた。

 ところが、試合はこれで終わらない。延長後半の109分、川崎の頼れるエースストライカー、小林がコーナーキックからのこぼれ球を執念で押し込み、試合は3-3と三たび振り出しに戻った。

 結局、勝負はPK戦に持ち込まれたが、ここでも5人目までに決着がつかず、サドンデスの争いに。最後は札幌の6人目、進藤亮佑のキックを川崎のGK新井章太が止め、史上稀に見る激闘に終止符が打たれた。

 過去、ルヴァンカップ決勝で、両チーム合わせて6点以上のゴールが決まったケースは、これが3度目(決勝がホーム&アウェーで行なわれた1997年第5回大会を除く)。だが、リードするチームが3度も入れ替わり、さらには、そこから三たびタイスコアに戻った接戦となると、この試合の他に例がない。

 言い方を変えれば、どちらにとっても、一度ないしは二度のリードを奪った試合である。せっかくのリードを守り切れなかった悔しさや不甲斐なさは、負けた札幌はもちろん、勝った川崎にもあったはずだ。大味な打ち合いや拙い試合運びといった指摘があったとして、まったくの的外れとは言い切れない。

 しかし、挑戦者・札幌が王者・川崎をあわやのところまで追い詰めたというドラマ性も含め、最後の最後まで勝負の行方がわからない文字どおりのシーソーゲームは、理屈抜きに見応えがあった。

 ルヴァンカップ決勝史上、最高の名勝負。そう呼ぶにふさわしい激闘だった。

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