元祖イケメンJ助っ人。引退後にフィギュア選手に転身した「王子」とは? (2ページ目)

  • 津金壱郎●文 text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO

 W杯が終わっても人気は衰えず、女性週刊誌は毎号のようにグラビアを掲載。写真集やDVDも発売され、トルコへの応援ツアーも企画された。中田英寿の所属する事務所とのマネジメント契約によって、W杯翌年の2003年には森永乳業のプリンやトヨタ自動車のCMにも出演した。

 そんなイルハンブームも落ち着きを見せていた頃、再びイルハンの名前がメディアで踊る。2004年から新たな運営会社に経営を譲渡したヴィッセル神戸が、移籍金5億円・年俸3億5000万円の2年契約でベジクタシュから獲得した。

 2002年W杯以来となるサッカー界屈指のイケメンの来日となった2004年2月10日には、成田空港でファン約50人がお出迎え。都内で行なわれた来日会見にはサッカー関連のメディアのみならず、テレビ各局のワイドショーや女性ファッション誌など65媒体、約200人の報道陣が詰めかけた。

 前年まで1試合平均の観客動員1万人超がやっとだった神戸にとって、イルハン加入は集客の起爆剤になった。

 当初の予定より2週間前倒し売り出されたホームスタジアムでの開幕戦のチケットは早々に売り切れ。当時Jリーグを中継していたスカパーはイルハン効果の視聴者増加を期待し、開幕戦では試合そっちのけでイルハンの姿や表情だけを追う「イルハン・チャンネル」を用意した。

 迎えた3月13日、ジェフユナイテッド市原との開幕戦。カズ(三浦知良)と2トップで先発したイルハンは無得点に終わったものの、神戸は先制を許しながら後半にDF北本久仁衛、MF和多田充寿の2発で逆転勝利。3万人の観衆が見つめたなか、イルハンは両チーム最多のシュートを放ち、次戦以降のJ初ゴールに期待が膨らんだ。

 しかし、イルハンがピッチで存在感を発揮したのは、実質的にこの試合が最後だった。開幕戦の10日後には古傷の右ひざの違和感から自宅のあるドイツに帰国し、4月1日にはイタリアでW杯後4度目となる右ひざ手術を受けた。

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