鬼気迫るプレー。若手サブ組がFC東京の来季を明るく照らす (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「すばらしい気持ちのこもったプレーをしてくれた」

 長谷川健太監督の言葉がすべてだろう。ベストメンバーを組めないなかで、出番の少なかった選手たちが躍動し、結果まで手に入れたのだ。勝ち点3以上の価値のある勝利だったに違いない。

 殊勲の中村は、今季、明治大から加入した大卒ルーキー。長友佑都、室屋成の系譜を継ぐSBとして期待された。両サイドをこなす汎用性の高さもあり、開幕戦からスタメン起用されるなどコンスタントにピッチに立っていたが、出番を減らす時期もあり、レギュラーの座を確保したとは言い難かった。

 さらにACLでは、再開初戦となった上海申花で決勝PKを献上するなど、悔しい思いも味わった。だから中村は、「今年1年、試合に出させてもらうなかで、得点だったり、アシストだったり、結果を出すことができず、貢献できなかった悔しさがあった」と振り返る。そのなかで生まれたプロ初ゴールに「やっと、FC東京の一員になれたかなと思います」と、安堵の表情を浮かべた。

 その中村を上回るインパクトを放ったのは、後半からピッチに立った紺野和也だった。

 こちらは法政大から今季加入した大卒ルーキーだ。身長161cmと小柄だが、キレのあるドリブルを連発し、攻撃を活性化。後半の反攻を生み出すとともに、献身的なハイプレスで広島の攻撃を不自由なものとした。

「紺野も悔しい思いをしてきたひとり。今の思いをぶつけてこいと送り出した。すばらしいプレーをしてくれたし、紺野が入って流れが変わった」

 指揮官が言うように、紺野もここまでは期待に見合った働きができていたとは言い難かった。リーグ戦の出場は7試合のみで、スタメン起用は一度もなし。プロの壁に苦しむなか、主力不在のこの試合にかける想いは並々ならぬものがあっただろう。

 もうひとりの大卒ルーキーである安部柊斗は、すでに主力級の存在感を放っている。他チームを見渡せば、川崎フロンターレの三笘薫(筑波大)を筆頭に、今季は大卒ルーキーたちの躍動が目立つ。そうした状況を踏まえれば、ふたりには相当な危機感があったと想像できる。鬼気迫るプレーで勝利に貢献したふたりからは、プロの世界で生き残っていく覚悟と意地を見た。

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