J1終盤戦に突入。川崎の記録更新とセレッソ大阪の戦術の奥深さに注目 (2ページ目)
今季の川崎がここまで得点数を増やせた要因のひとつに、アンカーを置く4-1-2-3(4−3−3)にしたシステム変更がある。これがトランジション(攻撃から守備への切り替え)の強度を高めて守備の安定につながっているのだが、じつは川崎のボールポゼッション率はこれまでより下がっている。ただ、相手にボールを持たれる時間が増えた分、相手が前に出てくることでスペースができ、これをうまく生かしていると言える。
また、川崎は今季の交代枠が5人になったことを有効に活用している。試合展開に応じて、鬼木達監督は大胆に選手を入れ替える。これで苦しい展開をひっくり返した試合も何度かあった。
ただ、交代の5枠を使うから勝ち切れているのではない。これは特長の異なる高いレベルの選手が揃っているからこそ。昨季はスタメンとそれ以外ではチーム力に差が生まれたが、今季はそれがなく、誰が出場しても高いチーム力が発揮されている。
これも川崎のサッカーのスタイルが微妙に変化したことにある。鬼木監督が風間八宏前監督の築いた土台を引き継いで4シーズン目になるが、昨季までは攻撃に関しては風間時代からの精密なコンビネーションによるところが大きかった。この部分はそのままに守備を高めて2連覇を達成したのだが、昨季は攻撃でゴールを決め切れずに覇権を失った。
精密で丁寧なパス回しは、一見すると今季も同じように思える。しかし、今季は精密さの度合いが少し薄まり、その分、今までハマりにくかった個で局面を打開する選手たちのプレーがうまく混ざるようになった。レアンドロ・ダミアンや三笘薫、旗手怜央、齋藤学などのプレーが生きて、攻撃の威力が増しているのだ。そして、これがスタメンとベンチで選手を入れ替えて選手の特長が変わっても、チーム力が落ちないことにつながっている。
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