「天国か地獄か」がないJ1後半戦。
監督解任もなく緊迫感も薄らいでいる (2ページ目)
今季の下位3チームのうち、仙台と清水は「新監督」という共通項があるのが興味深い。同じく新監督を招聘した鹿島アントラーズが序盤戦に苦戦したことからも、新たな指揮官を迎えることの難しさがあらためて浮き彫りとなっている。
シーズン中の監督交代には賛否がつきものだ。V字回復するケースもあれば、状況を悪化させる例も少なくない。当然監督が代わればスタイルも変わり、チーム作りはイチからの構築を余儀なくさせる。シーズン中にそれを執り行なうのは、ある種のギャンブルだろう。
チーム作りに求められるのは、確かな信念と、そこに向かう継続性であることは言うまでもない。
たとえば、2007年のサンフレッチェ広島は入れ替え戦で京都サンガに敗れ、J2降格の憂き目を見た。しかし、チームを率いたミハイロ・ペトロヴィッチ監督は翌年も指揮を執り、1年でJ1復帰を成し遂げると、昇格1年目に4位と躍進。その後に続く黄金期の土台を築き上げている。
アンジェ・ポステコグルー監督率いる横浜FMにも、同様のことが当てはまる。就任1年目は残留争いに巻き込まれながらも、1年目に蒔いた種が花を咲かせた2年目に、見事にリーグ制覇を成し遂げている。
ふたつのクラブに共通するのは、成績だけに監督交代の判断を置かなかったこと。チーム作りの正しい方向性と、未来への希望を見出していたことが大きかった。
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10月14日に味の素スタジアムで見た清水からは、残念ながらその両方を感じることはできなかった。FC東京を相手に、清水はいいところなく1−3で敗れている。
ここまでわずか3勝で、失点53はリーグ最多。一方で、攻撃も外国籍選手の個の力に依存する部分が大きく、組織性を大いに欠いている。
今季の清水は、昨季まで横浜FMでコーチを務めていたピーター・クラモフスキー監督を招聘。圧倒的な強さを示した王者同様の攻撃スタイルに舵を切ったはずだった。
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