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カズの存在が横浜FCの勝因になっている。
背中で語る53歳の美学 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Getty Images

 それでもピッチに立たなくとも、カズの影響力は絶大だった。試合は横浜FCが3−2と打ち合いを制し、連敗を3で食い止めている。下平隆宏監督は、勝因のひとつにカズの存在を挙げた。

「ウォーミングアップや円陣も、いつもと違った雰囲気があった。カズさんがいるから、ピッチの中でポジティブな声が飛んでいた。そういったことが苦しいゲームを勝利に導いた要因かなと思います」

 決勝点を決めた瀬沼優司も、カズの影響を受けたひとりだ。今季、出番が限られるなかで、カズの言動に励まされてきたという。

「いつもまったくネガティブなことを言わず、黙々と努力する背中を見ている。カズさんが毎日努力しているのに、弱いところを見せている場合ではないなと、となりにいるだけで感じられていた。カズさんの背中を見ながら準備していたことが、今日の結果に結びついたと思っています」

 試合前やハーフタイムに、ウォーミングアップをするカズの姿を見て感じたのは、想像を絶するような「準備」の時間である。試合に出られるかわからないなか、出番が訪れるその瞬間のために、黙々と準備を進めていくのだ。

 年齢を重ねるごとに、身体のメンテナンスにかかる時間は間違いなく増えているだろう。なにも、この日だけではない。シーズンが始まってからの半年間、J1でプレーできなかった13年間、もっと言えばブラジルでプロ契約を結んだ1986年からの34年間、カズは試合に出るために準備を続けているのだ。

 もっとも、その時間もカズにとっては、苦しいものではないのかもしれない。

 なぜ、そこまで続けられるのか。

「サッカーが好きだから、ですかね」

 あの時の言葉が、頭の中でリフレインした。

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