2020.09.11

「平成の天才」は輝きを取り戻すか。
宇佐美貴史になくて江坂任にあったもの

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

 しかし、日本では圧倒的なパフォーマンスを見せながら、ドイツでは再び不遇の日々を過ごした。2度目の欧州挑戦も、経験こそ手に入れたとはいえ、成功したとは言い難かった。

「成功する、もっと上を目指すという気持ちの強さが大事になってくると思います。環境が全然違うし、メンタリティも、文化も違う。とくにヨーロッパでは、個人がよりフォーカスされる。サッカーはチームスポーツだけど、そのなかでいかに自分を出していけるか」

 宇佐美と同様に若くして海を渡った稲本潤一は以前、欧州で成功するためのポイントをそう語っている。宇佐美に気持ちの強さがなかったとは言わないが、足りないものがあったのも事実だろう。昨季途中に再びG大阪に復帰した宇佐美は、気づけば今年で28歳となった。

 天才と呼ばれたアタッカーは、このまま普通の選手に成り下がってしまうのだろうか。いや、そうとは思えない。やはり国内では、その能力が屈指であることに変わりはないからだ。

 復帰した昨季は14試合に出場して7得点。今季もハードスケジュールを強いられるなか、全14試合にスタメン出場し、3得点・3アシストと結果を残している。

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 9月9日に行なわれた柏レイソル戦でも、能力の高さを見せていた。走り込みながら浮いたボールを難なくトラップし、そのままシュートに持ち込み、鋭いクロスで決定機を演出。少しでもフリーになれば、強烈かつ正確なミドルを枠内へと打ち込んでいく。ボールロストもほとんどなかったはずだ。

 もっとも、プレー精度の高さこそあったとはいえ、チームに流れをもたらす働きは示せなかった。むしろより効果的だったのは、正確なフィードで好機を生み、スペースに流れてパスを引き出し、クロスを頭で合わせて2点を奪った、同じ1992年生まれの柏の江坂任のほうだった。

 江坂にあって宇佐美になかったのは、ダイナミズムだろう。言い換えれば「迫力」になるかもしれない。かつての宇佐美には、ボールを持てば果敢に仕掛け、一気にゴールに向かう迫力があった。