「湘南スタイル」はどこへ?
今季未勝利のベルマーレが苦戦する要因 (2ページ目)
ところが、この日はそのよさがほとんど感じられなかった。とりわけ前半は、いいところなし。あっさりと2失点を喫した守備だけでなく、攻撃もシュート2本のみと、ゴールに迫ることはできなかった。
「前半はうまくこぼれ球を拾えず、相手のシンプルな背後への攻撃に屈して失点してしまったことは大きな反省点」
浮嶋敏監督が振り返ったように、セカンドボールを回収できず、前線の個性を生かした柏のシンプルな攻撃に押し込まれたのは事実だろう。
攻撃に関しても、持ち前のスピードを発揮できなかった。今季の湘南は、ボール保持の時間を長くする狙いがあるという。たしかに、後方から丁寧にビルドアップしていく姿勢は見られた。
だが、ボールは縦になかなか入らず、横や後ろに回るばかり。ボールを奪えば素早く切り替え、一気に縦に突き進む"湘南スタイル"の姿はそこにはなく、余裕をもってブロックを築く柏の堅牢を崩せなかった。
突出したタレントを備えているわけではない湘南は、インテンシティの高さや走力、献身性が生命線となる。しかし、この日は切り替えや球際の争いで後手を踏み、ペースを掴めなかった。
ロングフィード1本からPKを招いたシーンや、戻りが遅れて相手をフリーにする状況を生み出した3失点目の場面などは、その象徴だろう。連敗阻止のために危機感を募らせ、より走り、闘えていたのは柏のほうだったのだ。同じ2−3の敗戦でも、浦和戦とはその中身はまるで違った。
それでも2点を返した後半の戦いには、わずかに希望を見出せた。なかでも際立ったのは、鈴木冬一のパフォーマンスだ。
高卒2年目の20歳のレフティは、果敢な仕掛けで何度もサイドを切り裂き、突破口を開いた。83分には鋭いCKで、石原直樹のゴールも演出している。ポゼッションで勝っても、ボールがなかなか前線に入らない状況のなか、推進力を生み出す鈴木のプレーこそが、スピード感をもたらす数少ないファクターだった。
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