仲川輝人の才能を開花させた
横浜F・マリノスの超攻撃サッカー (3ページ目)
それにしても、なぜ横浜FMの選手たちは、ためらうことなく走ることができるのだろうか。走ったところでボールが出てこず徒労に終わる可能性はあるし、ボールを失えば長い距離を走って守備に戻らなければいけない。リスク管理を考慮すれば、判断に迷いが生まれてもおかしくはないはずだ。
最終節のFC東京戦で、途中出場からチーム3点目となるダメ押しゴールを決めた遠藤は、その理由を次のように説明する。
「それは去年から今年にかけて植えつけられてきたもの。信じているというか、この選手だったら絶対に出してくれる、ここまで突破してくれるという期待感がある。それができなかったら、そのぶん戻ればいいだけ。ハードワークをしない選手はウチにはいない。そういう信頼感があるから、走れるんだと思います」
思えば、6月に行なわれたFC東京戦。横浜FMは押し込みながらも、2−4と完敗を喫している。FC東京のしたたかな試合運びの前に敗れた格好となったが、ポステコグルー監督は確信に満ちた表情でこう語っていた。
「まだまだ発展途上だし、学ばなければいけないことはある。今日のようなカウンターで来るチームに対して、どう戦うのか。この教訓をどう生かすかだと思う。しかし、自分のやろうとしているサッカーがここで止まることはない。突き進んでやっていくだけだ」
それから5カ月後、両者の立場は入れ替わった。選手は味方を信じてピッチを走り続けた。指揮官のスタイルを信じてプレーし続けた。揺るがない信頼と信念が生んだ15年ぶりの戴冠だった。
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