J1昇格を決めた柏の転機。
指揮官は「人に強く」と言い続けた
11月16日、町田市立陸上競技場。スタジアムの一角を照らす落陽が、柏レイソルのJ2優勝、J1昇格を祝福していた。"太陽王"というクラブ名のとおりと言ったところか。
「降格させたチームをJ1に戻すのが自分の使命だった。レイソルはJ1にふさわしいチーム。今は充実感を覚えている」
柏のエース、クリスティアーノは訥々(とつとつ)と語った。安堵した様子だったのは、その道のりが平坦ではなかった証左だろう。
柏はいかにして1年でJ1に戻ってこられたのか?
J2優勝、J1昇格を喜ぶ柏レイソルの選手たちとサポーター「J2優勝確定」
今シーズンの開幕前からそう言われるほど、柏は昇格の絶対的な本命だった。日本代表GK中村航輔など多くの主力が残留し、戦力の優位は明らか。昇格請負人であるネルシーニョが5年ぶりに監督に就任したこともあっただろう。事実、2月末の開幕から4連勝でスタートした。
ところが、4,5月にかけては5試合勝ちなし(1敗4分け)ということも。その後も、引き分けが多く、勝ちが先行しない。6月、第17節の愛媛FC戦はアウェーながら3-1と敗れ、順位は6位に低迷していた。
「人に強く(いけ)」
ネルシーニョ監督は念ずるようにそう言い続けていたという。「局面で勝利することによって、全体で勝利する」。難しい戦術は導入していない。1対1での強度だけを高め、厳しい姿勢で甘えを許さない。得点したブラジル人も、守備をさぼると叱りつけたほどだ。
そして愛媛戦の後のアビスパ福岡戦、チームに変化が見られる。
「今シーズンのターニングポイントはアビスパ戦ですね」
そう語った柏のFW江坂任(あたる)は、福岡戦で自身が値千金の1点を決めている。
「相手に先制されてリードされ、終了間際に追いつきました。チームとしてあきらめずに戦って、そこから連勝することができたんです。(序盤は)取りこぼしが続きましたが、最後で勝ち切る試合をすることで、チームとして勢いになったのかなと」
粘り強い戦いが自信となって、重ねた勝利が確信につながった。第19節のジェフ千葉戦からは破竹の11連勝で、下馬評通りの強さを示した。
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