2019.11.12

仲川輝人のゴラッソが証明する、
日本代表「超」級のスピードと技術

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Hiroki Watanabe/Getty Images

「スピードスター」なる言い回しがあるものの、サッカー界で、見るからに足が速い快足選手がスターとして大成した例はあまり多くない。日本代表史を振り返っても、岡野雅行以降、永井謙佑(FC東京)が登場するまで、長い時間がかかっている。

 世界に目を転じても、すぐに名前が思い浮かぶのは、大成することのなかったセオ・ウォルコット、アーロン・レノンといった元イングランド代表選手の名前だ。超一流選手で唯一と言いたくなる例外は、昨季をもって引退したオランダ代表のアリエン・ロッベンになるが、彼とて最大の武器は相手の逆、逆を突くドリブルだった。

 昨季、レンタル先のアビスパ福岡から横浜F・マリノスに復帰した仲川輝人に対しても、探りを入れざるを得なかった。50mを5秒台で走る快足を、ピッチ上に効果的に落とし込むことができるか。途中で伸び悩んでしまった前述のウォルコットらとの姿と重ね合わせながら、ここまで目を凝らしてきたが、現在、悲観的要素を楽観的要素が断然、上回った状態にある。

北海道コンサドーレ札幌戦に先発、4-2の勝利に貢献した仲川輝人(横浜F・マリノス) 10月19日の湘南ベルマーレ戦で鮮やかなゴールを決めたものの、負傷で交代。11月9日に行なわれた北海道コンサドーレ札幌戦は、仲川にとって復帰戦だった。ところが、キックオフ直後から仲川はエンジン全開に暴れ回る。見せ場は開始2分、相手GKのミスでCFエリキが先制点を奪ったその直後に訪れた。

 CB畠中槙之輔から素早いフィードを受けた右SB松原健は、高い位置で構える右ウイングの前方に、これまた素早く球足の長い縦パスを送った。札幌の左ウイングバック(WB)菅大輝との走り比べに競り勝ったのは仲川で、ゴールライン寸前でボールに追いつき、キープすることに成功した。

 発端となった畠中の自軍ペナルティーアーク付近からのフィードから、松原経由で仲川が相手の最深部まで到達した時間は、わずか数秒。10秒かかっていないその高速プレーに、何より目が奪われた。

 仲川はそこから切り返すと、一瞬、相手とぐちゃぐちゃと交錯したが、ルーズボールを再び奪取。間髪入れず中央にマイナス気味のボールを送り込んだ。エリキの2点目となるヘディング弾が決まったのは、この次の瞬間である。