J1昇格を決めた柏の転機。指揮官は「人に強く」と言い続けた (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

「(ネルシーニョ)監督のもと、選手ひとりひとりがハードワークしたことがこの結果につながったと思います。すごく苦しいシーズンでしたが、団結することで乗り越えられました」

 町田ゼルビア戦後、あわただしく代表へ帯同したGK中村は、シーズンを簡潔に振り返った。
 
 選手が局面で力を出し切る状況になると、柏は他を圧倒している。

 優勝を決めた第41節、町田との一戦は象徴的だった。まず、キックやコントロールの質で差を見せつけた。開始わずか5分で0-2とリードした。

 1点目、瀬川祐輔のミドルシュートは、町田のクリアが甘く、セットプレーのポジショニングが悪かったこともあるが、強さも精度も光った。2点目はクリスティアーノの打点の高いヘディングシュートだけでなく、折り返しのヘディングでも相手を寄せ付けていなかった。"カテゴリーの差"を感じさせた。

 後半は相手のペースになりかけ、決定機を与えている。そこで立ちはだかったのが、GK中村だった。至近距離からのシュートを、右腕、左腕一本で連続セーブ。それでも表情を変えず、役者の違いを見せた。

「今シーズンは難しい試合が多かった。序盤はうまくいかず、中盤になって、自分たちが進むべき道を見つけ、確立することができた。率直にこの結果がうれしい」

 指揮官であるネルシーニョは、町田戦後に語っている。  

「選手が指示を忠実に実行してくれた。(2010年にJ2で優勝した時と)唯一の違いは、J2のレベルが全体的に上がった点。インフラや運営など、どのクラブもレベルが高くなっている。リーグ全体が底上げされたことは、10チーム近くが昇格プレーオフを争っていることでもわかるはずだ」

 それでも、ネルシーニョがよりどころにしたのは、基本となる「人に強く」だった。戦力的に上なら、個人が負けない限り、チームも負けない。簡単なロジックだ。

 J2では、単純な技量で相手を上回った。1対1が鍛え抜かれたことで、攻守の強度も増した。クリスティアーノの3点目は、実にネルシーニョ柏らしかった。

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