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ドリブラーから華麗に変身。
38歳・松井大輔がボランチで新境地 (3ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 就任直後はシステムを頻繁に変えて試行錯誤を繰り返した新指揮官だったが、松井のポジションは従来の前線ではなく、中盤のセンターもしくはインサイドハーフに固定。松井のボールを扱う高い技術、キック精度、サッカーセンスをいかんなく発揮できるポジションを与えたことは、まさに慧眼だった。

 やがて下平監督が見つけ出した最適解が、現在の基本布陣4−2−3−1。トップ下のレアンドロ・ドミンゲス、スピード豊かな両ウイングの中山と松尾、さらに両サイドバックの北爪健吾&武田英二郎の攻撃参加を支える舵取り役を担うのが、松井と田代真一のボランチコンビだ。

 ウイングやトップ下がかつての持ち場だった松井と、センターバックを主戦場としていた田代の組み合わせは、抜群の補完関係にある。当初はボランチでのプレーに戸惑いを見せるシーンもあった松井も、試合を重ねるごとに田代との役割分担と関係性をブラッシュアップ。自分が前に出て攻撃参加する時、センターバックの間に落ちてビルドアップに参加する時など、状況に応じて"ボランチらしい"プレーヤーへと変貌を遂げている。

 とりわけ、ボールが落ちつかず攻守が激しく切り替わるJ2において、横浜FCは松井のところでボールを収めて落ち着かせることができるのが強み。そのうえで、ボランチから両サイドへ展開するミドルパスと前線への縦パスをミックスし、ボールを握ってからサイド攻撃で仕留めるかたちと、ボールを奪ってから縦に速くフィニッシュに持ち込むかたちの両方を兼ね備える。

「前線でボールを追いかけて守備をすると疲れてしまうけど、ボランチは考えて守備をするので、それほど疲れない。今の僕には、頭を使うボランチのほうが合っている」

 そう語る松井は、磐田時代から毎年1月に三浦知良とともにグアムでの自主トレーニングを続けるだけあり、肉体は衰えていない。逆に、身体が動きすぎて自陣でファウルを犯し、それが失点につながることもある。そこはボランチとして大いに反省すべきだが、今はその身体を張ったディフェンスが周囲の士気を高める効果につながっていることに目を向けるべきかもしれない。

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