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巻誠一郎がブラジルのレジェンドから
学ぶ「多様なセカンドキャリア」 (3ページ目)

  • 鈴木智之●文 text by Suzuki Tomoyuki
  • photo by aiwell

自分の価値を把握して社会に還元していくべき

 エジミウソンさんのように、世界のトップに到達するためには、サッカーならサッカーとひとつのことに特化して、全神経を注いでいくことが大切だと思います。一方で私が感じるのが、多くのアスリートが、競技をするうえで培ってきた能力を、スポーツ以外のことに変換する能力が乏しいことです。エジミウソンさんは、現役時代に培った能力を活かしてセカンドキャリアを歩んでいますが、どのようなことを考えて、現役時代を過ごしていったのでしょうか?

「サッカー以外の仕事にもアスリートの経験が還元できる」と巻「サッカー以外の仕事にもアスリートの経験が還元できる」と巻

エジミウソン ブラジルの場合、サッカー選手になるというのは、強烈な競争環境に身を投じることを意味します。14歳でクラブに入り、そこから競争に勝ち残った、ひと握りの選手がプロになることができます。私もそうでしたが、とくに貧しい地域の子どもにとって、サッカー選手になるということは「この環境から脱出するための第一歩」なのです。目標を達成するために全身全霊をかけて取り組む、コミットする力は現役時代に身に着けた能力だと思います。

 日本人とは、サッカーに対する考え方が、大きく違いますね。

エジミウソン ブラジルの子どもたちが、サッカーというスポーツに携わる最初のモチベーションは「サッカーで自分の人生を良くするんだ」ということです。日本の場合は親が働いていて、ご飯も食べられますし、学校に通って勉強することもできます。でもブラジルの、貧しい地域の子どもたちはそうではありません。まずクラブに入ってサッカーを始め、「クラブのルールとして、学校に行かなければいけない」となります。学校に行ったうえでサッカーをする日本とは、順序が逆なんですね。

 日本では学校に行って勉強して、それからサッカーをするのが当たり前ですが、ブラジルではクラブに入ったから、ちゃんと学校にも行かなければいけないという考え方なのですね。

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