イニエスタ不在をどう克服するか。神戸のプレー精度が落ちた理由 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

 しかし鳥栖戦と比較すると、札幌戦のプレー精度は格段に落ちていた。ボールを回していても、プレースピードが一定のため、誰も、どこも、マークが外れない。後ろで回す時間が長く、プレスをかけられての不用意なパスミスも少なくなかった。それが、相手にセットプレーを与える結果にもなっていた。

 対照的に、札幌は戦術的成熟度の高さを見せている。とくに後半は前線の3人を2トップにし、チャナティップが一つ下がり、神戸のアンカーであるセルジ・サンペールを潰す布陣に変更。これによって、神戸のビルドアップを狂わせた。

 神戸は昨シーズンから監督がころころ変わり、成熟度は低い。その分、適応する柔軟性に欠ける。田中順也の同点弾で追いついたものの、セットプレーから再び一発を喰い、終盤はフェルマーレンを前線に上げるパワープレーしか打つ手がなかった。

<イニエスタの「不在の在」>

 そう言わざるを得ない試合展開だった。鳥栖戦での全力プレーの代償か、スペインのエースはケガに見舞われ、この日は出場していない。

 イニエスタは要所で起点になることができる。絶妙なタイミングでエアポケットに入り、体を振って視線を変えながら幻惑し、「チャレンジにいけない」と対戦相手を悩ませる。事実、飛び込んだら、ほぼ間違いなく入れ替わられる。しかし誰も来ないと、イニエスタは悠々とボールを運び、相手をギリギリまで引きつけ、それによって空いたスペースや味方へ絶好のパスを送る。

「アンドレス(イニエスタ)に預けられる」

 その信頼感が、各自のプレーも確信に満ちるのだ。まさに「イニエスタが戦術」だが、それがひとつの限界点にもなっている。イニエスタがいない状況をどう克服するべきか。それは神戸の今後の戦いを左右する課題だ。

 試合後、イニエスタの次に圧倒的な実力を示しているベルギー代表DFフェルマーレンに話を聞いた。

――イニエスタがいるときといないときで、あまりにプレーレベルが違う。

「今日、アンドレス(イニエスタ)がいれば、と思ったのは事実だよ。彼はクリエイティブな能力がある。簡単にチャンスを作り出せてしまうから」

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