2019.09.01

イニエスタ不在をどう克服するか。
神戸のプレー精度が落ちた理由

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

「難しい試合になることは予想していた。実際に戦ってみて、スコアとしてはどちらが勝利してもおかしくなかった。運を味方にし、3ポイントを稼ぐことができた」

 敵地でヴィッセル神戸に2-3の勝利を収めた後、北海道コンサドーレ札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督は正直に吐露している。

 試合の岐路となる判定があった。1-1の同点で迎えた後半7分、札幌は右CKを得ると、ゴール前は混戦に。これをジェイが巨体を生かして押し込んだ。

 しかしジェイは腕でボールにコンタクトし、ひじは神戸のディフェンダーの顔面に入っていた。なおかつ、ボールがラインを割ったかどうかも微妙。これに神戸の選手たちは猛抗議したが、判定は覆らなかった。

「手に当たったか、ゴールラインを越えたか、わからない。最近はアンラッキーな試合が続いていた。今日は運があったが、シーズンは長い」

 取材エリアに出て来たジェイは淡々と言った。試合結果に、判定が作用したのは事実だろう。しかし、神戸は単に不運で敗れたのか?
北海道コンサドーレ札幌に敗れ、引き上げるダビド・ビジャらヴィッセル神戸イレブン 8月31日、ノエビアスタジアム神戸。2連勝で降格圏から脱していた神戸は、7位の札幌と対戦した。

 神戸は前節、アウエーでサガン鳥栖を1-6と粉砕。フェルナンド・トーレスの引退セレモニーを、自分たちの祭りにした。その主役は”トーレスの盟友”、アンドレス・イニエスタだった。変幻自在にポジションをとってプレーを動かし、決定的な仕事を連発。神がかったイニエスタに触発されるように、中心選手が黄金の輝きを見せた。

 この夜も、神戸は試合を支配している。ボールポゼッション率で上回り、相手陣内に攻め込む回数も多かった。前半43分には、押し込んだ展開から、右サイドからのクロスに田中順也がファーサイドで先制点を決めた。

「理想としているポゼッションに近づきつつある。相手よりも最後の3分の1まで多く攻め込むこともできた」

 神戸のトルステン・フィンク監督は言う。6月に監督就任以来、チームはどん底からは脱した。守りが安定し、攻撃が回り出すようになった。トーマス・フェルマーレン、酒井高徳、飯倉大樹、藤本憲明らの大型補強も競争力を高め、功を奏している。