犬飼智也が鹿島に来て変わった勝利の味「喜びより先にホッとします」 (5ページ目)

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko
  • 渡部 伸●写真 photo by watanabe shin

――とはいえ、当時の鹿島には日本代表のCBがふたりいる。どちらかからポジションを奪わないと試合には出られない。

「はい。でもだからこそ、シンプルな話だなと思ったんです。そのポジション争いに勝てば、(代表スタッフや世間からも)見られると思う。ひとりじゃなく、ふたり揃って代表でしたから、どちらかからポジションを獲れば、僕にとっての日本代表も現実味を増すだろうと。それに身近に代表選手がいることは、基準がわかるというか、自分がなにをすべきかを理解しやすい環境だとも感じました」

――そのふたりが移籍という形でチームを離れ、レギュラーポジションを得た現在。ポジションを奪う立場から、守る立場へと変わったのでしょうか?

「(クビをひねりながら)......まだ満足はできていない。もっと絶対的な存在になれると自分に期待しているし、もっとやらなくちゃいけないと思っています。まだまだ物足りないですね」

――若手のころは先輩から学んで......という姿勢で挑んだのかもしれませんが、20代半ばとなった今、変化はありますか?

「若いときはいろんなことを吸収しようとして、あらゆることを吸収している。もちろん今もそこはあるんです。でも、ある年齢、たとえば僕くらいの20代半ばになれば、力を評価されて、試合に出してもらっている。だからまずは、自分のプレーをしっかり出すこと、チームとしてやることをしっかりやることが一番大事。それをしたうえで、もっと自分にできることが他にあるのかと考えています」

――犬飼選手のなかで、目指すべきCB像があり、そこへ近づくように成長もしているんだろうけれど、目指すべき姿もまた日々、高くなる。いつも6合目みたいな感覚ですか?

「本当にそうだと思います。絶対に昔の自分よりできているという自負があるけれど、物足りなさもまた強く感じるので。鹿島のCBとしては全然足りていないし、毎試合反省ばかりで、自分が満足いくような選手にはなれてはいないです」

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