犬飼智也が鹿島に来て変わった勝利の味「喜びより先にホッとします」

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko
  • 渡部 伸●写真 photo by watanabe shin

遺伝子~鹿島アントラーズ 絶対勝利の哲学~(47)
犬飼智也 後編

 ロスタイム6分。2点リードを許しながらも、追いつき、その後も攻勢を続けていたにも関わらず、勝利を決定づける3点目は奪えず、逆にボールロストからピンチを招き、与えたコーナーキックから失点。Jリーグ第21節、鹿島は湘南ベルマーレ相手に2-3で敗れ、リーグ戦8戦ぶりの黒星を喫した。

「後半開始直後に失点をしてしまったことが、この試合を象徴している。自分たちが後半の立ち上がりをしっかり入れなかったことが、のちのち、響いてきた。ハーフタイムにも伝えていたが、集中力、注意力が足りなかった。自分たちの意識の問題。プレースピード、攻守の切り替えのスピードをもっと速く、強くしていかなければいけなかった」

 大岩剛監督は、終了間際の失点以上に、49分、52分の2失点について口にした。

 土居聖真も「完璧に同じ形での失点。後半の(終了直前の失点につながった)最後のワンプレーもありましたけど、同じ形で2回もやられてる。しかも短い時間。あれはよくなかったし、あれがすべてだと思う。相手がよかったとかじゃないし、本当にうちの不注意というか、あっさりとやられた。それはレッズ戦も同じだった」と話した。

 7月31日の第16節浦和戦も1点リードしながら、88分に失点して勝ち点3を獲りこぼした。そして、中2日での湘南戦。湘南のチョウ・キジェ監督が「日程のところで公平性があったのか。鹿島の選手は身体が重かった」と指摘している。7月20日に第20節を戦い、鹿島戦を迎えた湘南と鹿島との違いは小さくはなかっただろう。浦和戦は気温31.2度、湿度64.0%。湘南戦は気温27.7度、湿度86.0%という気象条件を考えても、積み重なる疲労は心身ともに大きい。

 それでも、それが敗戦の理由にはならない。

「僕らはそれを言い訳に戦いたくはない。去年からずっと過密日程でやってきたし、そういうなかでも選手スタッフ、サポーターと戦ってきた。厳しい戦いですけど、当たり前だし、それを乗り越えてこそのチャンピオンになれるのか、なれないのかだと思います」

 選手の想いを代表するように土居は語る。

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