イングランドの「敏腕」が導く。Jリーグの新育成プロジェクトの中身 (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

 ご存知のとおり、2017年のU-20W杯とU-17W杯の両方で初優勝を遂げたイングランドは、現在「世界でもっとも旬」とも言える育成改革の成功例だ。テリー・ウェストリーは、2011年に始まった「EPPP(イートリプルピー=エリート選手養成計画)」と呼ばれるイングランドの育成プログラムのスキーム設計に大きく関わり、プレミアリーグのウェストハムのアカデミー・ダイレクターも長く務めた経験豊富な人物である。

2017年のU-20W杯を制したイングランド代表 photo by getty Images2017年のU-20W杯を制したイングランド代表 photo by getty Images 彼に加えて、プレミアリーグやウェストハムのアカデミーで仕組み作りや運営戦略の立案などを担当した、アダム・レイムズをフットボール企画戦略ダイレクターに招へい。彼らのコンサルティングを受けながら、日本人スタッフがチームを形成して推進していくというのが、「プロジェクトDNA」のおおまかな構図だ。

「今回のプロジェクトの話をするうえで強調しておきたいことは、私たちは各クラブのプレーモデルやアカデミーのフィロソフィーといった部分に関わるつもりはないということです。あくまでも彼らの育成面の活動を活発にするための目標作りや戦略を立案し、それをサポートすることが主な役割であり、彼らに何かを押しつけることはありません。

 これは、プレミアリーグで行なわれた育成改革の考え方と同じです。プレミアリーグは各クラブのフィロソフィー、あるいはチーム戦術などに関与しているわけではなく、各クラブのアカデミーが持つ理念を尊重したうえで、その活動がさらに向上できるような戦略を提供しているにすぎません」

 イングランドの成功プロセスを熟知するテリー・ウェストリーが強調する、リーグ機構と各クラブのアカデミーの関係性は、「プロジェクトDNA」の戦略立案においても肝になっている部分だ。おそらくそこに、なぜJリーグがイングランドおよびプレミアリーグを参考にして、今回の育成改革に取り組むに至ったのかという真の狙いも隠されている。

 そもそも世界一の資金力を誇るプレミアリーグでは、「世界中のトッププレーヤーが集うがゆえに自国選手が育たない」というジレンマがあった。クラブがヨーロッパのカップ戦で結果を残す一方で、代表チームは低迷を続けた。そこで考案されたのが、プレミアリーグのホームグロウン制度の導入と、ほぼ時を同じくして発動された育成改革プログラム「EPPP」だった。時は2010年、今からおよそ9年前のことである。

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