今季はJ1にスペイン人監督が3人。彼らはなぜ日本を目指したのか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Fujita Masato

 スペイン国内に、指導者の働き場所は少なくはない。なぜなら、2部Bといわれる実質3部リーグは4つあって、4部リーグは18ある。3部は80チーム、4部は約360チームも存在しているのだ。

 日本のJ3、JFLとはわけが違う。スペインの新米監督は、こうした下部リーグで経験を積み、競争するなかで頭角を現し、監督として台頭する。これが、スペインに名将が多く出るメカニズムだ。

 神戸のリージョ監督も、4部や3部で実績を積んでいる。そしてサラマンカを2部、1部と昇格させ、当時史上最年少の29歳で1部チームの監督になった。下部カテゴリーで培った監督力は本物だ。

 もっとも、下部リーグのサラリーは限られる。にもかかわらず、成績不振だと真っ先に責任を取らされる。厳しい労働環境と言えるだろう。若手監督にとっては場数を踏めるだけに悪くはないが、キャリアを積んだ監督が再起を図るには覚悟がいる。

 そこで近年は、スペイン人指導者が外貨を求めて海外に進出するようになった。中国、カタール、インド、インドネシアなどアジア各国のクラブだけでなく、代表監督も増えつつある。ユース年代の指導者も含めると、その数を正確に把握することはできない。

「スペイン人監督というだけで保証書付き」

 そういう時代だ。

 スペイン人指導者の名声は、今や世界を席巻している。マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラは最高の名将だし、ロシアW杯で日本を撃破したベルギー代表を率いているのも、スペイン人監督ロベルト・マルティネスだった。他にも、プレミアリーグではラファ・ベニテス(ニューカッスル)、ウナイ・エメリ(アーセナル)などが采配を振るう。

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