植田直通は「いつも難しいほうを選ぶ」だから鹿島入りを迷わなかった (2ページ目)

  • 寺野典子●文 text&photo by Terano Noriko

「チームとしてももう少しいろんなバリエーションというか、懐というか、幅というか、どういう言葉が適切なのか今はわからないけれど。いろんなものに対応できる大きさ、チーム力の大きさ、幅の大きさ。レベルが上がれば(それらが)もっともっと必要になってくる。これは選手だけじゃなくて、スタッフも含めてね。だからこそ無駄にしたくない。この悔しさだとかは、僕にとってはエネルギーになる。今後の監督人生もそうだし、このチームを率いている上では絶対に忘れてはいけない試合のひとつになった」

 12月20日の練習後、大岩剛監督はレアル戦をそう振り返った。見せつけられた力の差は選手個人だけでなく、監督やコーチ、そしてフロントなど、鹿島アントラーズに関わる様々な人間たちにとっても同様なのかもしれない。

「どんな試合でも100点満点なんてない。悔しさはサッカー選手にとって必要なことだけど、僕は勝って成長したい」

 レアル戦後、泣き崩れるようにして感情を発露させた安部裕葵はそう言って前を向いた。

 負けることを許さず、たとえ相手が欧州王者であってもその姿勢は変わらない。鹿島アントラーズもまた、勝つことで、成長し続けたクラブだ。しかし、勝利の美酒だけで成長してきたわけじゃない。

 白い巨人と言われる名門中の名門チームと対戦した。選手個々の力の差、歴史の差、クラブの格の違い。それは試合前から自覚していたはずだ。日本のクラブが負けるのは、世界的に見れば当然の結果だろう。それでも、これほどまでに悔しいと感じられることが選手やチームの可能性を示しているのかもしれない。

 中2日で今季60試合目となる南米王者リバープレートとの3位決定戦が待っている。多分この試合でもまた、悔しさを味わうに違いない。勝利したとしても多くのことを気づかされる一戦になるだろう。その気づきがまた鹿島を強くすると願う。

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