西大伍が考える鹿島の良さは
「自分たちのサッカーに縛られない」

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko
  • 井坂英樹●写真 photo by Isaka Hideki

遺伝子~鹿島アントラーズ 絶対勝利の哲学~(39)
西 大伍 後編

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 前半27分。右コーナーキックから放たれたボールを浦和レッズのディフェンダー、マウリシオがヘッドでゴールに叩き込みネットを揺らす。それ以前もそれ以降も鹿島アントラーズはボールを持ち、試合を支配していたが、自陣前に引いた浦和のゴールを奪うことができないまま90分が経過し、天皇杯準決勝は浦和レッズの勝利で終わった。

「誰が見ても俺たちのほうがいいサッカーをしているんだけど、セットプレーで1発獲って勝っていくのはオズワルド(・オリヴェイラ)らしい」と内田篤人はかつて鹿島を率いた敵将を称えた。遠藤康も「レッズさんも勝ちにこだわっていたと思うので、それはすごく称えたいなぁ......と思う」と語ったが、球際の激しいゲームでピッチに倒れこむレッズの選手たちに苦労したようだ。「でも、結果が大事なので。うちらも勝っていたらああいうふうにやるかもしれないし、お互いさま。最後のところのアイディアが不足していた。最後は相手がギリギリのところで(シュートを)止めたりして、ああいうところで運が転がってくればよかったですけど、これが俺らの実力なので」とまとめる。

 敗者が語る言葉には数多くの悔いが詰まっている。しかしそれらは、試合終了直後にはなんの意味を持たないのも事実だ。試合の内容など関係なく、勝ったほうが強い。それにこだわり、戦ってきた。だから、言葉を発すれば発するほど虚しさしか残らない。

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