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ありがとう、川口能活。
43歳のGKはクラマーの名言を体現した (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 12月2日のギオンスタジアムには、プレーのみならず、人間としても大きく成長を遂げた川口がたしかにいた。サッカーは少年を大人にし、大人を紳士にする――。彼こそ、故デットマール・クラマーの名言を体現したフットボーラーだと思うのだ。

 その一方で、プレーに対するこだわりや向上心については何ら変わっていないことも、現役最後の公式戦となったこの鹿児島ユナイテッド戦で、あらためて証明してくれた。

「キック、フィードのところで自分自身がかなり悪いリズムを作ってしまっていて、試合を難しくしてしまったところがありましたが、1対1のシチュエーションには自信がありますし、守備において絶対やらせないという気持ちで試合に臨みましたので、その自分のストロングポイントを最後の試合で出せたことはうれしかったです」

 試合後、川口はこの日の自分のプレーをこのように振り返った。負けてもおかしくないような試合展開のなかで、何度も訪れたピンチを神がかり的セーブで防ぎ、まだユニフォームを脱ぐには惜しいと思わせるようなパフォーマンスを見せながら、最後の最後まで自分のプレーのディティールにこだわるところは、まさに川口そのものだった。

 日本のゴールキーパーの歴史を変えた男の花道を作ったSC相模原の望月重良代表も、「2000年アジアカップ決勝のサウジアラビア戦とかぶって見えた」と、この日の川口のパフォーマンスに舌を巻いた。その望月が先制ゴールを決めた後、サウジアラビアの猛攻を川口が救い、日本がアジアカップ優勝を遂げた試合である。

「あの試合でも、あいつの神がかり的なセーブで最終的に勝つことができた。今日も信じられないようなプレーの連続で、結局、最後に1-0で勝ってしまった。『持っている』という言葉だけでは表せないような存在感がやっぱりあいつにはあるんだと、あらためて実感した」

 それだけではない。10年前にゼロからクラブを立ち上げて社長を歴任し、現在は代表としてSC相模原を統括する望月にとっても、この試合にはいろいろな思いが詰まっていた。

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