アンジェvs.ミシャ。J1最上級のスペクタクル対決の戦術を分析する (2ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 ところが、先手を取ったのはアウェーの札幌だった。「相手が横幅を広く使ってくるのはわかっていたので、4枚で対応しようと考えた」と試合後に話したミハイロ・ペトロビッチ監督は、主力(都倉賢、宮澤裕樹、福森晃斗)の出場停止もあり、今季初めて4バックで試合をスタート。ただし、レフトバックの菅大輝が頻繁にオーバーラップを仕掛ける変則的なもので、普段のシステムである3-4-2-1とさほど変わらない。横浜の攻撃をタフに受け止め、左から反撃に転じる形で徐々にリズムを取り戻していった。

 15分にジェイ、17分にチャナティップがネットを揺らしながら、どちらもオフサイドの判定でノーゴール(後者はオフサイドポジションのジェイがボールを避けたにも関わらず、GKの邪魔をしたと判断された。試合後、ミシャとジェイは「(審判の判定に意見するのは)日本ではタブーとされている」とこの場面に関する見解を控えた)。

札幌を率いるミハイロ・ペトロヴィッチ監督札幌を率いるミハイロ・ペトロヴィッチ監督 さらに19分にはジェイが菅のクロスから決定機を迎え、ここは相手のブロックに阻まれたが、その2分後にジェイが先制点を奪う。中盤で天野純から激しくボールを奪った荒野拓馬がすぐさま縦パスを送ると、受けたジェイが右から斜めにドリブルを仕掛け、対面する敵をカットインで外して巻いたシュートをファーサイドのゴール下隅に収めた。

 札幌が鮮やかな個人技で先制すると、対する横浜は手数をかけた攻撃で同点に追いつく。「(先に)失点したけど、何も変える必要はない。そのままやっていけば、絶対に勝てると信じていた」と天野が振り返るように、先制された2分後に左サイドのスローインからポゼッションを開始。そこから9本のショートパスをつないで、最後は仲川輝人が軽やかなステップで敵をかわして同点ゴールを決めた。

 42分の逆転ゴールは、それよりも多い11本のグラウンダーのパスがつながって生まれたものだ。中盤でマイボールにするといったんCBに渡し、中央で右SBが受けて外へ展開。細かいパス交換で左前にポイントをつくり、自信満々に味方を追い越したSB山中亮輔へ天野が絶妙のスルーパスを通して、そこからの折り返しを最後はニアサイドでウーゴ・ヴィエイラが押し込んだ。見事な崩しが結実したすばらしいゴールだった。

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