すべては強くなるために。7失点もコンサドーレはぶれずに戦い抜いた

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 今季就任したミハイロ・ペトロヴィッチ監督のもと、北海道コンサドーレ札幌は確かに生まれ変わった姿を示していた。J2生活が長く、J1に上がっても毎年のように降格候補に挙げられるようなチームが、今季はシーズン終盤を迎えてもなお、上位争いを演じている。J1リーグ第25節を終えて、順位は4位。クラブ史上初のACL出場も夢ではなくなってきた。

今季からコンサドーレ札幌を率いているペトロヴィッチ監督今季からコンサドーレ札幌を率いているペトロヴィッチ監督 そんななかで迎えた川崎フロンターレとの上位対決。北海道を襲った大震災の影響で困難な状況ではあったものの、勝てば3位浮上の可能性もあるだけに、モチベーションは高かっただろう。もちろん、被災地への強い想いも備わっていたはずだ。しかし、等々力競技場で待ち受けていたのは、見るも無残な現実だった。

 28分に家長昭博に先制点を奪われると、直後にも中村憲剛にボレーをねじ込まれる。その後もミスから失点を重ねた札幌は、最終的にプロ初出場の田中碧にもゴールを許し、7失点。前年王者にコテンパンに叩きのめされたのだ。

 しかし屈辱的な大敗にも、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は穏やかな表情で記者会見に臨んでいた。そこにはあきらめに近い思いがあったのかもしれない。実力の差を思い知ったということもあるだろう。それでも指揮官には、大敗のなかにも確かな手応えがあったという。

「決して腰の引けた試合をしたくなかった。前からプレッシャーをかけて、ボールを奪い、相手ゴールに迫っていく。そうした勇気のある試合をしようとしたなかで、前半は非常にいい入りができた。特に失点するまでは狙いどおりの戦いができていたと思う」

 ペトロヴィッチ監督が言うように、立ち上がりは札幌のペースだった。強烈なプレスで相手のミスを誘い、鋭い出足でボールを奪い取る。そこからの展開もスムーズで、サイドを鋭く突きながら川崎Fゴールに迫っていった。

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