負けてほめられるのはもうイヤ。ベルマーレの美しい形は変貌している

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 近年、湘南ベルマーレが「いいサッカー」をしていることは、もはやJリーグの常識と言ってもいいだろう。

 いいサッカーをもう少しかみ砕いて表現するなら、スプリントを繰り返すことができる走力と、速い攻守の切り替えで相手を圧倒する、スピーディーなサッカーとでも言おうか。

 2012年からチームを指揮する曺貴裁(チョウ・キジェ)監督は、今季で7シーズン目となるが、その間、3度のJ1昇格を果たす一方で、2度のJ2降格も経験している。なかなかJ1に定着することができずにいるが、そこに悪い印象がないのは、湘南がいいサッカーをしているからに他ならない。

 とはいえ、当事者にとってみれば、いつまでもいいサッカーをしていることだけに満足はできない。

 曺監督にしても、「湘南スタイル」という言葉だけがひとり歩きし、結果が出ていないにもかかわらず、「いいサッカーをしている」と評価されることに、むしろ悔しさや苛立ちを感じているようにさえ見受けられた。「負けてほめられるのは、もうたくさん」とでも言うように。

 もちろん、指揮官にしても、湘南の特長を失ってはいけないことはわかっている。しかし、ただ「縦に速い」とか、「勢いで一気に攻め切る」とか、そうしたことだけでは勝てないことも、過去のJ1経験で思い知らされてきた。

 だからこそ、湘南は自分たちのサッカーのスタイルをまったく変えてしまうのではなく、曺監督の言葉を借りれば、「スタイルの幅を広げる」ことに取り組んできた。

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