ヴェルディの指導者が名門ソシエダで学んだ「クラブ哲学とメソッド」 (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko photo by AFLO

レアル・ソシエダ(スペイン)に1年間、派遣されている冨樫剛一氏レアル・ソシエダ(スペイン)に1年間、派遣されている冨樫剛一氏――冨樫さん自身のスペインでの生活はいかがですか?

「バスクには、男性だけで会員制のキッチンつきの場所を借りて、料理をして楽しむ習慣があるんです。あるとき、キーパーコーチが料理してくれるというのに招待されたんです。それでフランスとの国境近くに行って、21時開始で6時間、男だけでずーっと話をしているんです。前菜を食べながら飲み始めて、メインが出て、最後はデザートまで。僕がしゃべったのなんて2分くらいで、あとは聞いているだけですけどね。よくよく聞いていると、話は上司のこととか(笑)。日本と変わらないなと思いました」

――まさに地元体験ですね。

「僕が指導者も海外に出るのが大事だと思ったのは、選手たちに『世界ではこうだ』という話をするのに、自分が世界に立ったことがないのでは説得力がないからです。知っている、だけじゃダメだなと思ったんです。自分は選手としても経験が少ないし、指導者としても一生懸命勉強して、ようやくここまできた。でも選手の方が先に進んでいる現実を見たら、説得力がないし、尊敬してもらえないんじゃないかという思いがありました。

 それは小林祐希、高木善朗といった海外に行った選手と話すときもそうですが、それだけじゃありません。小林の代の子で、ヴェルディのジュニアユースを中2でやめてもらった子がいるんです。レベル的に追いついてなかったからなのですが、慶応の付属校に行ってるし、『そっちで頑張れ』と。数年経ってばったりその子に会ったら、東京海上(日動火災保険)に就職が決まったと言うんです。

 彼に『ジュニアユースをやめるとき、お前は将来、選手とは違う形でヴェルディを支える人間になれと冨樫さんに言われたから、そうなれるように勉強しているんです』と言われて、泣きそうになりました。他にも上のカテゴリーに行けなかった子はいるけれど、ヴェルディのOBサッカー大会みたいなものに来てくれたりする。そういう彼らと、ちゃんと話せる指導者でありたいな、というのがあるんです」

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