永井秀樹、ユース監督2年目。あの前橋育英を撃破した理想のサッカー (4ページ目)

  • 会津泰成●文・撮影 text&photo by Aizu Yasunari

 永井は試合前、選手たちにこう伝えていた。

「3点奪われたら4点奪い返す、4点奪われたら、5点奪い返す。我々が目指すのは、そういうサッカーだ」

 その言葉の裏にはこんな意味があった。

「『たまたま決まった1点を必死に守り抜いて勝つサッカーよりも、圧倒的にボールを支配して相手にサッカーをさせない。攻撃し続けることにこだわって4-3で勝ちたい』と話した。

 ゴールは素晴らしい。勝利はもっと素晴らしい。でも、それ以上に大切なことは常にある。理想を追求し続けること。選手以上に、新米監督だからこそ貪欲に、ひたむきに取り組みたい」

 後半が始まると、前橋育英は再三突かれていたサイドから裏に抜ける動きを封じ込めるため、マークを徹底してきた。

 ボールを繋いで相手を崩すヴェルディ。

 守備を安定させてチャンスを伺う前橋育英。

 ヴェルディユースは後半開始早々に同点に追いつかれる。しかし、後半37分、そして試合終了間際、松橋優安(ゆあん/2年)がスピードを活かした突破で2得点を挙げた。松橋は、それまで代表歴など大きな実績はなかったが、永井が昨年、夏に見出しスタメン起用して以降、急成長した選手だ。

 互いのこだわりが垣間見えるハイレベルな応酬に、応援団、観客からは歓声や拍手が沸いた。

「前半、我々はあれだけ崩せたのに、後半は修正されて、簡単には崩せなくなった。『さすが名将、山田監督』と思った。お互いが自分たちのこだわるサッカーを貫いて成長し合える。これが育成年代のあるべき姿と改めて思った。単に『勝った』『負けた』ではなくて、お互いが成長に繋がる試合ができたことは、本当によかった」

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