J2首位の大分が甲府に大敗。「つなぐサッカー」で昇格の夢は叶うか (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komoya Yoshiyuki photo by Masashi Hara -JL/Getty Images for DAZN

<相手にボールを渡さず、攻め続け、攻守で優位に立つ>

 そのフィーリングで、大分は首位を走っているのだろう。しかし88分には、CKからリンスにヘディングで叩き込まれて6-2となり、万事休止した。

「(後半は)4バックにすることも考えましたが、点差が開いたことで、(システムを)変えるよりも、逃げずに戦うことで、相手のプレスをはがし、得点することにチャレンジしました。まずはボールを奪わなければならなかったので、前からプレスにいきながら、(途中で投入した)川西(翔太)がボールを保持するなかで得点を狙いましたが......」

 試合後の記者会見で、片野坂監督はその心中を明かしている。

<プレスをはがす>

 メッセージはそこにあるのだろう。ボールを持つことが最大の防御で、すなわち最大の攻撃になるというプレーコンセプト。パスワークは彼らの自慢の武器と言える。事実、今シーズンはJ2で一、二を争うパス本数を通している(一方でドリブルは一、二を争うほど少ない)。ボールプレーの練度の高さによって、大分は首位に立っているのだ。

 ただ、ボールを持っているということは、餌を持って歩いているのと同じで、ときに獰猛に食いつかれる。その場合、相当に高いレベルの技術と戦術がなければ、「ボールのつなぎを狙われてカウンターを浴びる」という高い代償を払わされる。前節のレノファ山口戦も、その罠にはまって追いつかれていた。

 今後、対戦相手はパスワークを研究して挑んでくるだろう。大分はそれを打破できるのか。精度が必要なため、わずかな気の緩みで綻びができるし、心理的な混乱は一気に伝播する。

 2013年以来のJ1昇格を果たすには、勇敢に"諸刃(もろは)の剣"を用いて敵を斬り続けなければならない。

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