レノファ山口をJ1に導くか。「ハリルを連れてきた男」の巧みな手腕 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Getty Images

「監督のおかげで新境地が開けました!」

 ミックスゾーンでは、地元テレビのインタビューに溌剌(はつらつ)と答えている選手もいた。山口に在籍するのは、ほとんどがトップレベルの壁を破れなかった選手たちである。つまり、プラス要素と同時にマイナス要素を抱えている。その最たる例がMFの三幸秀稔(みゆきひでとし)だろう。パサーとしてトップレベルのセンスを持っているにもかかわらず、プレーに連続性がなく、それでいていつも満たされない様子で、ひ弱さのほうが目立った。

 しかし、霜田監督は三幸を主将に抜擢し、守備のタスクもあるアンカーに配置した。「リーダータイプではない」「守れる選手ではない」という意見は多かった、霜田監督はそれを逆手に取った。「意見は持っている選手だから、言葉に責任を持たせることにした」と、自立を促したのだ。

 もっとも、たった数カ月で代表選手のようなプレーができるほど甘い世界ではない。

 甲府戦、三幸は前半、ワールドクラスと評しても遜色のない上質なパスを3本も出し、軽々と好機を作っている。1本は右サイドを完全に破り、もう1本は自陣から一気に相手の背後をつき、さらにライナー性の弾道で裏に走った選手にピンポイントで合わせた。オンザボールでは天使のようだった。

 しかし後半は、足先だけでボールにチャレンジし、何度も入れ替わられた。失点シーンも、相手のカウンターでボールホルダーに甘く寄せ、自分のラインを突破されている。また、終盤には不用意な持ち出しを奪われてカウンターを喰らうなど、まるで悪魔のようだった。

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