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奇跡の天皇杯優勝。「フリューゲルスが
理想のチーム」と三浦淳寛は言う (2ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 フリューゲルスというチームがこの世に誕生し、存在したことを、永遠に人々の胸に焼き付けるには、最後まで強さを見せなければならない。その強さを見せつけることで、これほど強く、素晴らしいチームが消滅してしまう不条理さを訴えることができる。チームの方向性は決まった。

「優勝まで、1分でも、1秒でも、このチームで長くやっていく」

 天皇杯は、これまでどおり主力選手で編成し、勝ちにいくことになった。

 さらに主力選手たちからの提案で、勝利給は試合に出場しない選手たちにも分配できるようにした。レギュラーの面々は、控え組の"就活"の場をなくしてしまった、という思いがあったからだ。それも、家族的なチームだからこその取り組みだった。

 三浦も最後まで全力で戦う覚悟を決めた。

「優勝するまで、できるだけ長くみんなと一緒にプレーしたかったし、個人的には優勝すれば、『何か起こるかもしれない』『何か起こってくれ』って思っていましたから」

 フリューゲルスは、ひとつにまとまって最後の戦いに挑むことになった。

 大塚FCとの3回戦は4-2で勝利。4回戦のヴァンフォーレ甲府戦も3-0と完勝した。勝つごとにチーム内は活気づいて、勢いが増した。

 そんななか、ある日の練習後、三浦は吉田孝行から声をかけられた。

「アツさん、まだサインしてへんやろ」

 吸収合併するチーム、横浜マリノスからは永井秀樹、吉田、波戸康広、佐藤一樹、そして三浦にオファーが届いていた。他の選手はおおよそ契約を済ませていたが、三浦はまだ契約書にサインをしていなかったのだ。

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