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奇跡の天皇杯優勝。「フリューゲルスが
理想のチーム」と三浦淳寛は言う (4ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 続く準決勝は、ジュビロを下して年間チャンピオンとなった鹿島アントラーズと対戦。DF薩川了洋(さつかわ・のりひろ)が退場し、ひとり少ない10人での戦いとなったが、その10人が気迫あふれるプレーを見せて、1-0で勝った。

 当時「2強時代」を築いていたジュビロとアントラーズを撃破し、ついに決勝へ駒を進めた。

 決勝戦の相手は清水エスパルスだった。

 エスパルスは、前年の1997年に20億円を超える赤字を抱えて経営危機に陥り、実質的な親会社であるテレビ静岡が運営から撤退。市民の募金活動と地元企業のサポートにより、新たな運営会社を設立して何とか生き残った。ひとつ間違えば、フリューゲルスよりも先にチームが消滅していたかもしれない。

 そういう意味では、フリューゲルスの状況や選手たちの思いを最も理解しているチームと言える。その分、エスパルスの選手たちはやりにくさもあったのではないだろうか。

 だが、勝負事に忖度(そんたく)などない。試合は両者が激しくぶつかり合う熱戦となった。そして、1-1で迎えた後半27分、吉田が決勝ゴールを決めて、フリューゲルスが戴冠を遂げた。

合併騒動の中、天皇杯優勝を飾った横浜フリューゲルス。photo by Kyodo News合併騒動の中、天皇杯優勝を飾った横浜フリューゲルス。photo by Kyodo News「吸収合併の話が出てから、9戦無敗で天皇杯の優勝も勝ち取った。火事場の馬鹿力ってあるんだなって思いましたね。騒動となってから、選手みんな、メンタル的に不安定な状態になって、そういうなかで練習をするとケガをするから、ほどほどにしていた。それでも、まともに練習していないのに、試合になると力が出た。

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