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恩返しの「アーセナル学校」。
ベンゲルが日本サッカー界に残したもの (5ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi

ベンゲルを訪ね、再び指導者としての道を歩みだした小倉隆史 photo by Fujita Masatoベンゲルを訪ね、再び指導者としての道を歩みだした小倉隆史 photo by Fujita Masato ベンゲルに率いられたグランパスの快進撃から20年以上が経った。

 フィールドを幅広く使い、選手たちが弾かれたように空いたスペースに次々と飛び出していく。選手の個性と組織力が高いレベルで融合し、洗練されたコレクティブでスペクタクルなサッカーは、今なお色あせていない。

 私のスピリットがグランパスに残ることを望んでいる――。

 ベンゲルは退任の挨拶でこう述べたが、それはもちろん簡単なことではない。

「やっぱり監督が変われば、サッカーも変わりますから。ベンゲルのやったことをその後も引き継ぐというのは、難しいと思います」

 そう語るのは、平野である。ドラガン・ストイコビッチが2009年にグランパスの監督に就任した際には、ベンゲルイズムも垣間見られたが、それも一時的なものだった。

 しかし、ベンゲルのスピリットは教え子たちに受け継がれている。

 中西や平野はメディアの世界に身を置いて、ベンゲルから得たものを発信している。鹿島アントラーズの監督に就任した大岩、AC長野パルセイロを率いる浅野は、ベンゲルから学んだことを現場で選手たちに伝えていることだろう。小倉もまた、再びチームを率いる日のために精力的な活動を続けている。

 アーセン・ベンゲルという、ヨーロッパからやってきたひとりの指導者が撒いた種が、日本サッカー界のあちこちで芽吹き、花を咲かせているのだ。

(おわり)

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