「風間イズム」の魔法。グランパスの選手がドンドンうまくなっている (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 名古屋のサイドには相手守備を叩き壊す装置があった。「逆脚」(右利きは左サイド、左利きは右サイド)のサイドアタッカーを配置。インサイドハーフ、サイドバックとも連係し、幅を使って揺さぶる。相手がラインを下げたらその前を横切り、カオスを起こした。

 左サイドアタッカーに入った22歳、青木亮太はセンスが光った。「止まる」動きを身につけ、緩急で相手を外すことができる。マーカーを外した後、精度の高いシュートを持っていることで、敵にストレスを与えられる。そうやって相手を引きつけると、わらわらと和泉竜司、秋山陽介らが湧いて出る。青木は攻撃の渦の中心にいた。

「(相手どうこうよりも)我々は我々の距離でやるだけ。相手のどこを狙うか。そういう判断も上げていく。中盤や背後に、まだまだチャンスがあった」(名古屋・風間監督)

 最大の好機は77分だろう。名古屋は後方から細かいパスを何本もつなぎ、相手をずらしながら、ボールを運ぶ。そして右サイドから中に入ったシャビエルが、左足で中央のジョーに縦パスを入れ、リターンを受けた後、ワンツーで中をたわませ、フリーになった青木へ。青木のダイレクトシュートは惜しくもポスト右外に逸れた。

 結局、11本のシュートを放った名古屋は1点も決めることができなかった。湘南の健闘があったし、シュート精度の低さもあった。しかし、風間イズムは存分に示した。

「(シュートが)入らないなぁ、という試合だった。でも、大事なのはチャンスを構築しているということ」

 風間監督はスコアレスドローで終わった試合の後に明かしたが、青木、菅原、秋山のような新鋭は、その世界観の中で殻を破りつつある。

「名将は選手を成長させる」

 メノッティの言葉である。
 

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