新連載・アントラーズ「常勝の遺伝子」。生え抜き土居聖真は見てきた (4ページ目)

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko 井坂英樹●写真 photo by Isaka Hideki

――わずかな時間でも刺激になりますね。

「宇佐美(貴史/デュッセルドルフ)や小野(裕二/鳥栖)、宮吉(拓実/札幌)、杉本健勇(C大阪)、小林祐希(ヘーレンフェーン)なんかが同期なんですけど、当時、年代別の代表合宿で一緒だった彼らが、トップチームに二種登録されたり、トップで練習していると聞くと焦りましたね。宇佐美は別格だったけど、ほかの選手と自分との差が大きいという感じはなかったから」

――トップチームがどういうレベルにあるのか、そういう部分にもよりますよね。

「それは理解していました。優勝を争う状況で、そう簡単にユースの選手に経験を積ませるというわけにもいかないだろうから。でも、(年代別の)代表に行って、鹿島のユースへ戻るとやっぱりレベルが全然違う。U-17ワールドカップのメンバーが固まるなか、だんだん呼ばれなくなったりして、しょうがないことだとわかっていながらも、このままじゃダメなんじゃないのかと思いました。

 僕は子どもの頃から、いつも上の年齢の人たちと一緒にサッカーをしてきたんです。敵わない相手とやることの楽しさのなかで、成長してきた。ユースでも1年生のときは、3年生とやれば、引っ張られてうまくなれると思えたけど、3年生になったら、自分のチームに追うものがなくなったような気がしました」

――ユースはトップチームのそばで練習もしています。

「はい。だから、本当に近くて遠い存在でしたね。でも、横でプレーしている別次元のトップの選手をいつも見ていました」

――そして、トップ昇格が決まります。

「高3の夏ですね。だからといって、一緒に練習できるわけではなかったんですけど(笑)。僕の代から昇格できた選手は僕しかいなくて、ほとんどの選手は大学へ進学しました。最初はわからなかったんですけど、自分がトップの試合に出るようになって、同期のみんなが自分のことのように喜んでくれているのを知って、仲間の想いを託されているんだなって感じるようになりました。とはいえ、みんななかなか連絡くれないんですけどね(笑)」

(つづく)

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