名古屋にフットサル日本一を奪還させた
「スペインで認められた男」

  • 河合拓●取材・文・撮影 text & photo by Kawai Taku

 プレーオフ・ファイナルの2試合では、ブラジル選手たちを心地よくプレーさせながら、最前線でのプレッシングや最後尾でのカバーリングをこなし、初戦の後半開始直後には同点に追いつく直接フリーキックを決めるなど、大事な場面でゴールという決定的な役割も果たした。

 交代が自由にもかかわらず、プロ選手たちが居並ぶチームで異例なほど長時間、彼はピッチに立ち続けた。

 その采配について、ペドロ・コスタ監督は「彼はハートが強く、こういう試合でこそ彼の色が出るなと感じました。彼が100パーセントのモチベーションを出すことができて、燃えてプレーできるとき、本当の彼の姿が見えます。出場時間が長くても、持久力は別格です。走っても、走っても、疲れない持久力を兼ね備えているので、出場時間を引っ張ってもいいと考えていました」と説明した。

 自身にとって3シーズンぶりとなるFリーグ制覇に安堵する吉川は、「ここで優勝できたことで、全員が自信を持てると思います。1年間、僕は『このチームはそこまで勝負強くない』と言ってきましたが、この2試合でそこはひと皮むけたかなと思います」と成長を実感していた。

 だが、すぐに現状に満足していないことも示す。

「ただ、だからといって、『絶対王者』という立場にいるかというと、まだまだ積み上げないといけないことはたくさんありますし、まだまだ成熟しないといけないチームです」

 スペインから帰還し、名古屋オーシャンズにタイトルをもたらした吉川だが、彼のシーズンはまだ終わらない。プレーオフ・ファイナル終了の笛から数時間後、吉川は日本代表のトレーニングキャンプに合流した。

 2月1日から11日まで開催されるAFCフットサル選手権。日本は2年前にウズベキスタンで行なわれた同大会で初めて準々決勝で敗退し、コロンビアで開催されたワールドカップの出場権を逃した。ブルーノ・ガルシア監督は日本代表の目標に、「本来いるべき場所に立ち返ること」を掲げている。

 ウズベキスタンで大きな屈辱を味わったのち、世界最高峰の舞台で認められた男は、日の丸をつけても、その役割を全うしてくれるはずだ。

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