前橋育英、点が入らなくても慌てず騒がず。流経大柏をこじ開け初優勝 (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 高橋 学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 そして試合は90分を過ぎ、後半のロスタイムに突入。田部井涼は「延長戦も頭にあった」と、振り返る。

 だが、山田監督がそのリーダーシップを高く評価するキャプテンは、冷静に試合の流れを把握したうえで、「(試合終盤の)決定機が作れていた時間帯だったので、流れ的に(得点が)入るかもしれないと思っていた」。

 はたして、ロスタイムの92分。待望の決勝ゴールが決まる。

 田部井涼が左サイドからフワリと浮かしたボールを中央へ送ると、FW榎本樹(えのもと・いつき/2年)がヘディングで落とす。これを拾った飯島がうまくターンしてマークを外し、左足で放ったシュートはマンツーマンマークの三本木にブロックされたが、こぼれたボールを榎本がゴールへ叩き込んだ。殊勲の2年生FWが語る。

「ゲームには流れがある。(ゴールが決まったときは)流れがいい時間だったので、(延長戦突入目前でも)諦めずにゴールへ向かうことが大事だった。(ロスタイムの)3分という時間は短いようで長いから」

 敗軍の将、本田監督が「負けに不思議の負けなし。負けるべくして負けた」と、潔く語ったように、両校の間には決して小さくない実力差があった。結果は妥当なものと言うしかない。

 しかし、だからこそ、流経柏はその差を埋めるべく策を講じ、勝機を探った。一方の前橋育英は落ち着いて試合の流れを見極め、慌てずに勝負どころを待った。

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