「鳥栖が優勝する下地はできた」説は本当か? 今季8位の価値を検証 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Takashi Noguchi/Gigadesign -JL/Getty Images

 言葉にするとあまりに陳腐だが、それを武器とするまで極めていった。「蹴って走るサッカー」と揶揄(やゆ)する声もあったが、それだけでJ1上位には入れない。パス練習でも、ディテールを突き詰めていった。距離を伸ばしてのパス交換で、いかに集中できるか。パスの相手のクセを知り、自分の特徴を伝えられるか。パスひとつがコミュニケーションであり、献身や連帯にも繋がっていた。それが結実したのが、今季、尹監督が率いたセレッソ大阪の初タイトル(ルヴァンカップ)だろう。

 翻(ひるがえ)って、イタリア人指揮官フィッカデンティが采配を振るう鳥栖は、当時を超えたのか?

 現状をいえば、超えているとは言えない。単純に順位もそうだが、当時のほうが対戦相手は鳥栖を恐れていた。理屈ではない迫力があった。

 フィッカデンティ監督の率いるチームはロジカルである。守備戦術は整備され、イバルボは戦術軸になった。例えば、第32節のFC東京戦は完勝に近かった。

「単純にロングボールを入れるのではなく、ボールをつないで、という戦い方。つなぐのを怖がらないように、というのがチームの狙いにある。(自分は前で)ボールを預けてもらえるようなプレーを心がけている」

 そう語るイバルボを筆頭に、チームには実績のある選手が増えた。2017年は10人以上が新たに加入。ボールスキルの高い選手ばかりで、それはチームとしての変革を意味していた。

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