ジェフ千葉、敗北の中で膨らむ期待。
来季のJ1昇格がハッキリ見えた (2ページ目)
しかし、勢いですべての粗(あら)を覆(おお)い隠せるほど、サッカーは単純ではない。千葉の1点リードで終えた前半、すでに"異変"はピッチ上で起きていた。
「いつもどおりのプレーができていない選手がいた」
そんなことを感じていた35歳のベテラン、MF佐藤勇人が語る。
「ハイプレスでボールを奪い切り、ショートカウンターで得点することができてきて、(シーズン終盤の)試合を重ねて自信になって、今日の試合に挑めた。でも、このプレーオフというのは、いつもとちょっと違う雰囲気を感じている選手がいたように思う」
シーズンを通じて上位争いに加わっていたわけではない千葉にとって、7連勝は無欲の結果だったに違いない。だが、プレーオフ進出が決まり、J1昇格が現実のものとして目の前にちらついたことが、選手たちの意識に微妙な変化を生み出した。スコアのうえでは理想的な展開で進んでいるように見えた試合も、その内側では、これまでガッチリとかみ合っていた歯車が、少しずつズレ始めていた。
そして、そのズレを決定的なものにしたのが、後半に許した同点ゴールだった。フアン・エスナイデル監督は言う。
「先制後、すべてを完全に支配することはできなかったが、(試合内容は)悪くはなかった。同点ゴールが分岐点になった」
後半61分、セカンドボールを拾った名古屋のFWシモビッチがMF田口泰士に送ったパスは、千葉のDF近藤直也がクリアしたはずだった。
ところが、ボールは近藤の目の前に走ってきた田口の右腕に当たり、ゴール前にこぼれた。田口は自らボールを拾うと、左足で冷静にゴール右スミへ流し込む。試合は振り出しに戻った。
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