ケガを味方にして己を高めた石川直宏。引退を発表も「まだ終わりじゃない」 (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by AFLO

 昨年、石川はJ3(FC東京U-23)で一度復帰を果たしている。だが試合後の経過は思わしくなく、患部とは違う箇所が痛み出し、再び戦列を離れることになった。以来、実戦のピッチには立っていない。J1で最後に出場したのは、2015年のままだ。

「ドロドロとした感情を爆発させたい」

 石川は心境を吐露していた。周りの選手を気遣い、チームのためにできることをする。その一方、彼はプレーしたい欲求を封じ込めてきた。それは求道者のようで、やるせない思いは胸の奥にため込まれる。ドロっとした感情を解き放つのはピッチに立つしかない。

「まだ終わりじゃないので!」

 石川から引退会見の前に、LINEでメッセージが来た。引退は発表したが、復帰を断念したわけではない。最後の賭けのつもりで、残りのシーズンにすべてを投じようとしている。それは不器用で、彼らしい生き方と言える。

「ケガをしないのがいい選手ですよ。でも、俺は試練を与えられ、限界を超えられる瞬間がたまらなく好き。プロサッカー選手として生きるか死ぬか、その最後まで自分をさらけ出しますよ!」

 最後の最後の瞬間まで、石川はサッカー選手として挑み続ける。

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