脱ポゼッションで初のベスト4。潔い佐野日大の「守り一辺倒サッカー」 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

 躍進の要因は間違いなく、その守備にある。5-4-1の布陣による極端な守備的サッカーで、ここまで全国の猛者どもを次々に撃破してきた。初戦で和歌山北(和歌山県)に1-0で競り勝つと、2回戦ではオウンゴールの1点を守り抜き、米子北(鳥取県)に勝利。3回戦は2-2からPK戦の末に一条(奈良県)を下し、ベスト8進出。そして準々決勝では、山梨学院(山梨県)を4-0で下して勢いに乗る駒澤大高も見事に打ち破った。

 とりわけ前半の戦いぶりに、佐野日大の真骨頂が垣間見えた。

「相手は立ち上がりが本当に強いチームなので、そこでは絶対失点しないように。前半をゼロで抑えればチャンスはあるからと選手たちには言いました」

 海老沼秀樹監督の指示を、選手たちは見事に体現していた。5バックだけでなく、中盤の選手たちも自陣で守備に奔走し、前線には1トップのFW野澤陸(3年)を残すのみ。ボールを奪えば前方にアバウトなボールを蹴りだし、野澤に収まれば、MF佐野拓海(3年)とFW長崎達也(3年)の両サイドが後方から駆け上がり、なんとか連動しようと試みる。しかし、多くの場合は相手に奪われ、ふたたび攻撃を浴びてしまう。同じようなシーンが何度も再生されたが、佐野日大の選手たちの心は折れることなく、愚直にゴール前を固め続けた。

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