引退した永井秀樹の新たな挑戦。
「ヴェルディを再びチャンピオンに」 (3ページ目)
振り返れば、プロサッカー選手として、永井は常に"ヴェルディ"を軸にして動いてきた。25年間も現役を続けられたことは、もちろん凄い。だがそれ以上に驚くべきは、何度となく放出されながら、5度も同じユニフォームを着たことだろう。普通ではありえないサッカー人生である。
まさに永井は、緑のユニフォームの重みをプレーで伝える伝道師だった。
だが、迎えた2016年シーズン、2度のケガで長期離脱を余儀なくされる。「チームに迷惑をかけるようになった」と自ら判断し、後進に道を譲ることをついに決心した。
ホーム最終戦となるセレッソ大阪戦。永井は、残り7分という場面で交代出場した。スコアは0-2。ヴェルディは2点を追う状況だった。
見せ場は、ロスタイムに訪れた。永井が、相手マーカーを引き寄せてパスをスルー。永井のサポートに回っていた澤井が背後で受けて高木へパスを出すと、そのボールを澤井が再び受けてシュートを決めた。
『永井塾』で繰り返した反復練習の形どおり、完璧なコントロールからゴールを挙げた澤井。誰よりも多く、永井から教えを受けてきた一番弟子だった。
試合後の引退セレモニー。澤井は選手全員が引き上げてもなお、スタンドでサポーターひとりひとりと握手をする永井の姿を見つめていた。
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