モーツァルトを聴き叩き込む。サガン豊田陽平が語る奥深いゴールの極意 (5ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by AFLO

「自分の場合、『ゴールは獲らせてもらっているもの』という考え方です。"俺が俺が"というタイプではなくて、チームありき、というスタンス。それこそ、鳥栖の戦い方でもある」と豊田は言う。

「そこは絶対に勘違いしてはいけない。例えばフロンターレでプレーしていたらもっとゴールできているのに、とかは思わない。もしかすると、プレー中に感情的になったらそういうことも思うかもしれないけど、やっぱり鳥栖というチームにいて、このチームで積み上げたものがあるからこそ、今がある。ゴールを取らせてくれている選手に感謝していますね」

 ストライカーに必要とされる「決断力」を彼は持っている。シュートポイントに入って、ボールをゴールに叩き込む。その刹那(せつな)に「余裕」を見いだせるか、創り出せるか。そこにストライカーの本質はある。

 日本代表では最近、本田や香川真司が空振りをしたり、押し込むだけのシュートを外して批判されたことがあった。しかし、彼らはそもそも毎年二桁得点を重ねているゴールゲッターではない。点を獲る、という境地は特殊とも言える。その現実を直視するべきだ。

 例えばスポーツ紙の得点ランキングを見ると、そこにアシストも付記されている。豊田は残り3試合の時点でゼロ。しかし、アシストでストライカーの力は測れない。むしろ、得点とアシストを一緒くたにする表記は誤解を生む。

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