どん底の森﨑浩司を救った、森保一監督とふたりだけの早朝ランニング (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 体調や気分がすぐれないため、チームメイトには顔を合わせづらい。むろん、全体練習に参加できる状態にもない。だから、他の選手たちが練習場に来る前にグラウンドを走ろうと考えた。ただ、ひとりではきっと続かなくなる。さすがに練習がある兄・和幸には頼れない。悩んだ末に浩司が救いを求めたのが、他でもない森保監督だった。

「いくらでも付き合うよ」

 指揮官は明るく答えてくれた。それから浩司と森保監督は、午前10時から始まる全体練習より3時間も前にグラウンドで待ち合わせると、30分間のランニングをともにした。そこでは、こんな会話をしていたという。

「サッカーの話はあまりしなかったかもしれないですね。『今日はいい表情してるね』とか、走っているときは『浩司のペースが速いから、俺のほうが遅れちゃいそうだよ』とか、『もし早く走れるなら先に行っていいよ』とか......。今、考えると、僕をうまくコントロールしてくれていた。僕の走るスピードが上がれば、『いつでも復帰できるくらいだな』って、とにかくポジティブになれる言葉をずっとかけ続けてくれました」

 体調がすぐれないときもあった。天候が悪く行きたくないと思うこともあった。それでも......、「森保さんが練習場で待ってくれているから、一緒に走ってくれるから、僕の足は毎朝、練習場に向いたんです」と話す。

3 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る