岡山、クラブ史上初のJ1昇格へ、
「今、持っているロープを放さない」 (3ページ目)
実は失点前に交代の準備をしていたが、時すでに遅し、だった。
長澤監督は賭けに出る。後半76分、一気に3枚替え。数的不利ながら、4-3-2のツートップで前線に圧力をかけ、後方から押し上げた。
「1人少なくなって、逆に割り切れたのもあるかもしれません。あれくらいガラリと変えないと、ソリさん(反町監督)は対応してきちゃう。でも、ギャンブルでしたよ」
敗北を回避するための背水の陣は、吉と出た。ツートップに泡を食った相手バックラインを勢いで押し下げ、その前のスペースで躍動。松本に受けた攻勢の仕返しという形となる。
「どんなことがあっても諦めない精神が、岡山のDNAには備わっている」(長澤監督)
その資質を鍛錬してきたひとつの結果が出た。87分、右からのCKだった。交代でアンカーに入った金珍圭が落としたボールを、ペナルティアークにいた矢島慎也がフリーで蹴り込んだ。ドローに持ち込む値千金の一撃だった。
リオ五輪代表の矢島は、長澤が監督就任と同時に白羽の矢を立てた選手である。
「矢島は俺のことを嫌いだと思いますよ。1年目はとにかく厳しく言ってきたから」と、長澤は朗らかに笑う。
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