【育将・今西和男】森山佳郎「入団してきた選手全員を成長させる」 (2ページ目)

  • 木村元彦●文 text by Kimura Yukihiko photo by AFLO

 15歳で出てきた子を選手として、人間として、伸ばしながらチームとしても結果を出していくというのは、かなり至難であったのではないだろうか。

「"勝つ"と"育てる"って、矛盾してるようでそうでもないんですよ。選手の成長よりも勝利を優先してしまうと次に繋がらない。蹴っとけ、リスクを冒すな、と伝えて、選手の判断を奪って勝っても、次のステージでは活躍できない選手になっちゃうんです。

 つまり成長させて勝たないと次がない。僕はそこだけはブレないように来ました。僕の誇りはプロになれなくても、ほぼ全員がサッカー好きでいてくれること。大学に行っても続けたいという子がほとんどなんです」

 自分の限界を決めてしまって諦めるようなことはしない。森山は常々、人生はどこからでも逆転できるということを10代の選手たちに言い続けている。

 興味深いデータがある。野津田岳人が1年生ながら活躍した2010年の高円宮杯は、優勝するまでに費やした7試合中3試合が逆転勝ちであった。特に準決勝、決勝は先制される展開からひっくり返した。ファイナルの相手FC東京には武藤嘉紀がいた。「根性勝負なら、どこにも負けない」と宣言していた森山が、何があっても跳ね返すとハッパをかけ、試合を絶対に諦めなかった証左である。

 信頼を得るために森山が心がけたのは、伝える言葉のバックボーンを自分で努力して作ることだった。10代の感性はシャープだ。この人はどれだけ自分のことを考えて、汗をかいてくれているのかを瞬時に見抜く。

「僕はオシムさんみたいに名言を吐けないですけど(笑)、選手に対しての情熱や愛情、エネルギーをいつも目一杯かけていれば、そこに言葉は熱量を持って乗るじゃないですか。それが説得力になると思うんです」

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