【育将・今西和男】森山佳郎「入団してきた選手全員を成長させる」

  • 木村元彦●文 text by Kimura Yukihiko photo by AFLO

『育将・今西和男』 連載最終回
門徒たちが語る師の教え U-15/U-16日本代表監督 森山佳郎(2)

U‐15日本代表を指揮する森山佳郎U‐15日本代表を指揮する森山佳郎前回の記事はこちら>>

 今西和男と小林伸二が立ち上げたサンフレッチェユースは、21世紀となり、森山佳郎が監督に就任すると一気に開花する。ユース大会を9度も制し、数多くの代表選手を輩出した。その成功について問うと、森山は自分の手柄には触れず、今西の功績を強調した。

「今西さんの教えですね。吉田高校との提携もそうですが、15歳で親元を出る子たちのために三矢寮を作って、若い選手を生活の中から教育されたことですよ。寮長の稲田(稔)さんは東洋工業のマンモス寮時代からの知り合いだそうですけど、この人が今西さんの激烈な信奉者でしたから、今西さんに頼まれた以上死ぬ気でやると、11年間ずっと言ってました(笑)。

『サッカー選手の前に立派な社会人であれ』というのが今西さんのテーマですよね。それはつまり住んでいる地域に応援してもらえる、サポーターに応援してもらえるような人間になれ、ということ。子どもたちにそんな話をしてくれました。

 吉田町の行事にも必ず大量のカキとか持ってきていて、サンフレッチェのトップが、ユースのある町の人たちと自然に交流する。そこがやっぱり今西さんの素晴らしいところですよ。僕の中では目標とする人物で、何かを判断するときに、必ず今西さんの考えみたいなものが根底にあるような気がします」

 その教えとは。入団してきた選手全員が成長すること。

「そうですね。やっぱり人は宝です。自分が指導しているかぎり、選手の成長率は他のチームよりも絶対負けないようにしたいと思って。こいつはもう駄目だからちょっと切り捨てようとか、よくある話じゃないですか。そうじゃなくて、全員来てよかったなと思ってくれるクラブにしたかった。稲田寮長と2人で、ここに来た子たちすべてに愛情と情熱をかけて、人間としてもサッカー選手としても、必ず少しでも成長させて送り出すという気持ちでやっていましたね」

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