【育将・今西和男】片野坂知宏「最初の言葉は『感謝をしなさい』でした」

  • 木村元彦●文 text by Kimura Yukihiko  photo by Kyodo News

『育将・今西和男』 連載第22回
門徒たちが語る師の教え 大分トリニータ監督 片野坂知宏(1)

新体制発表の記者会見で選手とともにガッツポーズをとる片野坂知宏監督(前列左から3番目)新体制発表の記者会見で選手とともにガッツポーズをとる片野坂知宏監督(前列左から3番目)

 2016年、片野坂知宏は大分トリニータに13年ぶりに指揮官として帰ってきた。かつて日韓W杯の開催地に立候補するために意図的に創設され、県リーグからJリーグまで驚異のスピードで上り詰めたトリニータは2008年にはナビスコカップを制して、地方クラブの雄と称えられた。

 しかし、そんなクラブも翌年からは下降の一途を辿り、2015年の入れ替え戦では町田ゼルビアに敗れ、J3に降格していた。カップ戦まで制した元J1クラブが3部リーグに落ちるのは、史上初という屈辱であった。この窮地を救う切り札として片野坂はオファーを受けた。すでにガンバ大阪でヘッドコーチとして高い評価を受けていながら、敢えてその座を捨てて古巣に馳せ参じた。J1の強豪からJ3への移籍である。おそらく環境や待遇面では、かなり厳しい変化があったと推察されるが、OBとして火中の栗を拾う決意は固かった。監督就任を決断すると、即座に恩師に報告の電話を入れたという。

「そうしたら、今西さんは『本当に大変な仕事だと思うけれど、何かあれば協力するから遠慮なく言ってくれ』とおっしゃったんです。考えてみたら、トリニータの創設にも今西さんは関わっておられたわけですから、そこに戻ってきたのも大きな縁を感じています」

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